コラム
屋根
トタン屋根とは?メリットやデメリット、メンテナンス方法について解説
2023.03.15
さまざまな建築物の屋根材に使用されているトタン屋根ですが、どのような特徴があるのか知らない方も多いのではないでしょうか。
「住宅の屋根材として使用するのはおすすめ?」
「トタン屋根の劣化したときの症状やメンテナンス方法を知りたい」
など、さまざまな疑問があるでしょう。
そこで今回は、トタン屋根にはどのような特徴があるのか、メリットやデメリットについて解説します。さらに、劣化症状やメンテナンス方法についても解説しますので、トタン屋根について調べている方はぜひ最後までご覧ください。
トタン屋根とは?
トタン屋根は高度経済成長期ごろに主流となった屋根材ですが、現在ではスレートやガルバリウム鋼板を使った屋根材が主流になっているため、採用するケースは少なくなっています。
とはいえ、最近でもトタン屋根を採用されるケースもあるため、特徴が気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、トタン屋根の特徴や種類について解説します。
トタン屋根の特徴
トタン屋根は名前の通り、「トタン板」が使用されている屋根のことです。トタン板は薄い合板に亜鉛をめっきした板状の素材で、住宅のほかには倉庫や工場などに多く用いられています。トタン屋根は大正時代から少しずつ普及しはじめ、高度経済成長期ごろには全国各地の住宅で用いられるようになりました。それまで主流だった日本瓦と比較すると、安価で施工期間が短いことなどから需要が拡大した背景があります。
トタン板は正式には「亜鉛メッキ鋼板」と言い、先に解説している通り薄い合板に亜鉛をめっきした板状の素材です。ただ、サビやすい、耐久性がそれほど高くないといった点から、現在ではトタン板に変わる素材としてガルバリウム鋼板が使用されるケースが増えています。
ガルバリウム鋼板は「アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板」と呼ばれ、トタン板にはないアルミニウムを加えることで耐久性の高さ、サビにくさを実現しています。
トタン屋根の種類
トタン屋根は3種類に大別でき、種類ごとの特徴について解説します。波板トタン屋根
トタン屋根と聞くと、波型に加工された板をイメージする方が多いのではないでしょうか。この「トタン屋根=波型の板」というイメージはこちらの「波型トタン屋根」という種類のものです。薄い鉄板の強度を高めるために波型に加工され、波の間隔は大小2パターンあります。
瓦棒葺きトタン屋根
瓦棒葺きトタン屋根は「瓦」という文字が使用されているものの、瓦屋根ではなく、トタン屋根の一種で、屋根が下る向きに合わせて等間隔に縦棒が入った見た目をしています。縦棒の中には心木となる棒が入っており、そこにトタン板を固定して施工しています。つなぎ目が少なく雨漏れしにくいため、日本瓦やスレートの屋根よりも緩やかな傾斜角度でも施工可能なことが特徴です。
折板トタン屋根
折板トタン屋根は台形が連なっているような見た目をしており、波型トタン屋根よりもトタン板を大きく折り曲げているのが特徴です。凹凸型に加工することで水はけがよくなり、緩やかな角度でも施工可能なので、体育館や工場など大きな建物の屋根として用いられるケースが多い傾向にあります。
トタン屋根のメリット
トタン屋根の特徴について解説しましたが、採用する際のメリットが気になる方も多いでしょう。
ここでは、トタン屋根のメリットについて解説します。
材料費・施工費が安い
住宅の建てる際、建築コストやメンテナンスコストなど、費用面も重要なポイントになります。トタン屋根は材料費が安く、軽量で施工しやすいことから、材料費・施工費を抑えやすい点がメリットです。トタン屋根を施工する場合、1㎡あたり5,000~6,000円が相場であり、瓦屋根を施工する場合は1㎡あたり9,000~12,000円が相場となっています。
瓦屋根と比較すると約半分にコストを抑えられるため、費用を抑えたい方にとっては大きなメリットといえるでしょう。また、材料費や施工費や安いため、メンテナンスコストも安い傾向にあります。
軽量で建物への負担が少ない
トタン屋根に使用されるトタン板は、簡単に持ち上げられるほど軽量です。瓦だと小さくてもずっしり思いので、トタン屋根が軽い素材であることをイメージできるのではないでしょうか。30坪2階建ての住宅のおおよその屋根面積(55~64㎡)に、トタン屋根と瓦屋根を施工したときの重さの違いは以下の通りです。
屋根材 | 重さ(1㎡あたり) | 重さ(55〜64㎡) |
トタン屋根 | 5㎏程度 | 275〜320㎏程度 |
瓦屋根 | 42〜48㎏程度 | 2,475〜2,880㎏程度 |
このように、トタン屋根と瓦屋根では重量の差が歴然です。
瓦屋根は瓦そのものが思いため、屋根材として施工したときに住宅に負担がかかります。さらに積雪などで屋根部分の重量が増えると、構造躯体が重さに耐えきれなくなってズレたり、倒壊したりするリスクがあります。
一方、トタン屋根は軽く、雪が積もったとしても構造躯体にそれほど負担がかかりません。また、素材の性質上、雨や雪が留まらず流れやすいため、そもそも雪が積もりにくいうえに雨漏れが発生しにくいのもメリットです。
耐震性が高い
先に解説した通り、トタン屋根は非常に軽い素材なので、地震が発生したときの揺れも軽減できます。
というのも、地震による住宅の揺れは屋根の重さが関係しており、屋根が重いほど揺れが大きくなりやすいのです。
住宅の揺れを少なくできることで地震発生時の建物への負担も軽減できるため、結果的にトタン屋根は耐震性の高い屋根材といえるでしょう。
トタン屋根のデメリット
さまざまなメリットのあるトタン屋根ですが、デメリットもあります。
サビが発生しやすい
トタン屋根の素材は薄い鉄板に亜鉛をめっきしたものですが、表面のめっきがはがれやすい屋根材です。めっきがはがれるとサビが発生し、さらに劣化が進むとトタン屋根に穴が開いてしまうケースもあります。なお、劣化症状によっては全面貼り替えなどの大がかりなメンテナンスが必要になることもあるので、外的要因によってサビなどの劣化症状が現れやすいことはデメリットといえるでしょう。
遮音性が低い
トタン屋根は素材そのものが薄いため、遮音性が低いのもデメリットです。屋根材の遮音性が低いと雨のバラバラ、ザーザーという音や、車が通過する音などが室内に響くので、騒音がストレスになる可能性があります。台風や豪雨などの悪天候のときは、室内で会話できないほど騒音がひどく、睡眠を妨げられる可能性もあるでしょう。
トタン屋根の防音性を高めるためには、屋根裏に吸音材を施工したり、遮音性の高い塗料を塗布したりする方法がありますが、対策をしても音に敏感な方はストレスに感じる可能性があります。
断熱性が低い
トタン屋根の素材は薄い鉄板であるため断熱性が低く、屋根材として使用した場合は屋外の暑さや寒さが伝わりやすいのがデメリットの一つです。夏は屋根の温度が高くなって室内に熱がこもり、冬は冷気が室内に伝わるので、快適な温度環境にするには冷暖房設備が必須となるでしょう。また、断熱性が低いと冷暖房効率が悪くなるため、光熱費が高額になりがちであることも懸念点です。
トタン屋根を採用するなら、断熱材を入れたり、断熱塗料を塗布したりするなどの工夫が必要となるでしょう。
トタン屋根の劣化症状
トタン屋根は、近年主流となっているスレートなどの屋根材と比較すると劣化しやすい傾向にあります。
トタン屋根の劣化症状として代表的なものは、以下の通りです。
・色あせ
・チョーキング
・コケやカビの発生
・サビ
・穴あき
色あせ
施工したばかりのころと比較すると、ツヤがなくなったり、変色したりしている場合、色あせの劣化症状といえます。トタン屋根は塗装され、塗膜によって保護されていますが、紫外線などの外的要因で塗膜が劣化すると色あせしやすいです。放置するとより深刻な劣化症状になるので、早めにメンテナンスを検討しましょう。
チョーキング
トタン屋根に触れると、手に白い粉が付く状態をチョーキングといいます。チョーキングも劣化症状の一つで、塗膜が劣化しているサインです。とくに屋根材に金属を使用しているとチョーキングが起こりやすく、放置しても劣化症状がよくなることはないのでメンテナンスをおすすめします。
コケやカビの発生
金属を使用しているトタン屋根は、本来コケやカビが発生しない屋根材です。しかし、トタン屋根の水分をふくんだ砂やホコリが滞留し、そこにカビやコケが発生する可能性があります。カビやコケや発生すると屋根材の劣化を早めてしまうので、見つけたら早めに対処することが大切です。
サビ
トタン屋根の代表的な劣化症状がサビです。トタン屋根のめっきがはがれ、そこから劣化が進むとサビになります。小規模のサビでも一気に広がる特徴があるので、見つけたら早急にメンテナンスを行う必要があります。
穴あき
トタン屋根のサビを放置すると、そこから穴があいたり、ボロボロと崩れたりするほど深刻な劣化症状がみられることもあります。トタン屋根に穴が開くと雨漏れなどの二次被害につながる恐れがあります。
【劣化症状別】トタン屋根に必要なメンテナンス
トタン屋根の劣化症状について解説しましたが、劣化の進み具合によって必要なメンテナンスが異なります。
ここでは、トタン屋根に必要なメンテナンスを劣化症状別に解説します。
塗装
軽度なサビや色あせ、塗膜のはがれなど、比較的軽い劣化症状であれば、塗装が最適なメンテナンスといえるでしょう。塗装とは、トタン屋根の表面の塗装を塗り替えて、美観や耐久性などを回復させるメンテナンスのことです。一般的な30坪の住宅に塗装した場合、40~48万円ほどかかるとされています。
葺き替えやカバー工法などのメンテナンス方法と比較すると施工費用が安いので、劣化症状が軽い段階で塗装メンテナンスをするとよいでしょう。
葺き替え
トタン屋根の穴があいていたり、ボロボロ崩れるほど重度なサビが生じたりしている場合は、葺き替えがメンテナンスの選択肢となります。葺き替えとは、現状のトタン屋根と下地を撤去し、新しく屋根を作り直す工法のことです。
30坪の住宅で110~140万円ほどかかるのが一般的であるため、メンテナンスコストは決して安くありません。しかし、屋根の寿命をリセットし、症状を回復できるのが魅力です。
カバー工法
カバー工法とは、現状のトタン屋根の上に下地を貼り、新しい屋根を設置する工法です。カバー工法も葺き替えと同じく、塗装ではカバーしきれない劣化症状に対して行われます。葺き替えとは異なり、既存のトタン屋根の上に施工するため、撤去の手間がかからず費用を抑えやすいのがポイントです。ただし、既存の屋根の劣化具合によってはカバー工法ができないうえに、内部が傷んでいるまま施工してしまうリスクがあるなどの懸念点もあります。
また、屋根の上に屋根を重ねるので、屋根の重量が増えて住宅への負担がかかりやすいこともデメリットです。カバー工法は、葺き替えをするのは費用的にむずかしい場合の選択肢になりますが、注意点があることを知ったうえで採用を検討しましょう。
部分修理
部分修理とは、トタン屋根が破損したり、はがれたりした箇所を部分的に補修する作業のことです。部分修理であれば、一か所あたり数万円で済むでしょう。ただし、足場を組まなければならない場合は、15万円ほどの費用がかかることもあります。
あくまで部分修理なので、屋根全体のメンテナンスを検討されている方には不向きですが、こまめな部分修理をしておくと劣化が進むのを抑えられます。
まとめ
今回はトタン屋根について解説しました。トタン屋根とは、薄い合板に亜鉛をめっきした板状のトタン材を使用した屋根のことで、住宅のほかには倉庫や工場などに多く用いられています。
トタン屋根は素材が軽いことから建物への負担が少ない、施工費用が安いなどのメリットがありますが、一方でサビやすかったり、遮音性・断熱性が低かったりするデメリットもあります。
定期的にメンテナンスをすれば長持ちさせることは可能ですが、メンテナンスを怠ると穴が開いて雨漏れをしたり、サビでボロボロになったりするリスクもあるので、素材の性質を理解したうえで採用を検討することが大切です。
ぜひ今回の記事を参考に、住宅の屋根材を検討してみてください。
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